過活動膀胱 手術療法
過活動膀胱とは?
過活動膀胱は、尿が近くなる頻尿や、夜間に尿が近くなる夜間頻尿の原因のひとつとなる病気です。この病気は、40才以上の方の8人に一人(推計で800万人)が持っているといわれており、身近な病気のひとつで以下のような症状が知られています。
1)尿意切迫感
突然尿をしたくなり、がまんが難しい症状です。
2)頻尿
昼間、トイレに8回以上行く症状です。
3)夜間頻尿
夜、寝ているときにトイレに行きたくなり起きなくてはならない症状です。
4)切迫性尿失禁
急にトイレに行きたくなり、我慢できず尿を漏らしてします症状です。
これらの症状は、過活動膀胱だけに特徴的なものではないため、他の病気の可能性を検討した上で、必要であれば薬剤による治療を行います。薬は様々なものがあり、病状や他疾患との関連で薬を選択して治療を行います。効果が不十分な場合には組み合わせて使用することもあります。
難治性過活動膀胱
薬による治療を行っても改善が見られない場合、薬による副作用で治療が続けられない場合を難治性過活動膀胱と呼びます。
難治性過活動膀胱に対する治療の中で当院では仙骨神経刺激療法(SNM: Sacral Neuromodulation)とボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法が可能です。
仙骨神経刺激療法(SNM)
SNMは仙骨神経を刺激する細い電極を仙骨内に挿入して過活動膀胱を治療する方法です。持続的に電気刺激を行うため、心臓ペースメーカーのような装置を臀部に埋め込みます。欧米ではおよそ30年前から行われており、日本でも2017年9月から健康保険で治療が可能となりました。当院では東北地方で最初にこの治療を開始しました。
この治療は入院していただき、2段階の手術で行います。
第一段階
麻酔を行った上で、仙骨神経の近くに刺激電極となる細い電極を刺入します。これを体外から刺激を行い、過活動膀胱の症状の改善傾向があるかどうかを確認します。
第二段階
効果がなかった場合には電極を局所麻酔で抜きます。
効果があった方には、ペースメーカーの様な装置を臀部に埋め込みます。手術後は刺激装置から弱い電流を出し、神経の刺激を続けます。定期的に通院して頂き、効果と刺激の条件を調整します。
ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法
ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は2000年に初めて海外で報告され、その有効性と安全性から欧米を中心に普及している治療法です。日本では2020年4月から保険適用となり、当院でも4月からこの治療を開始しました。
ボツリヌス毒素は過活動膀胱だけではなく、まぶたや顔面のけいれん、多汗症、斜視などの治療に用いられている一般的な治療法です。
ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は麻酔を行った上で膀胱の内視鏡で膀胱の筋肉内に20~30ヵ所に分けて100~200単位を注射する治療法です。
効果は通常注入後数日でみられ、4~9ヶ月程度持続します。この効果は個人差があります。効果が弱まった場合には再度の注入も可能です。出血や、排尿困難などの副作用もあり得るため、基本的には入院で治療を行っています。
この治療を避けたほうが良い方もあり、事前に検査と準備が必要となりますので、担当医と相談が必要となります。